日本の家計貯蓄率は世界一なのか?主要国比較データで見る「貯金好き」の実態
「日本人は貯金好き」「欧米人は貯金しない」——こんなイメージ、あなたも一度は聞いたことがあるはずだ。ボクも金融IT企業で働いていて、この手の話は社内の雑談でもよく出てくる。でも実際にOECD(経済協力開発機構)のデータを引っ張って確認してみると、このイメージ、かなり昔の話だった。今日はさるちゃんが、感覚論を抜きにして数字だけで「日本の貯蓄率」の実態を解説する。使うのはOECD(経済協力開発機構)や内閣府、総務省統計局といった公的機関が公表しているデータだ。誰かの主観的な印象ではなく、一次情報にあたって初めて見えてくる姿を、事実と解釈をきちんと分けながら整理していきたい。
日本の家計貯蓄率は、1970年代には世界トップ級で20%を超えていたのは事実。でもOECDの直近データでは1%を切る水準まで下がっていて、主要国の中でもかなり低いグループに入っている。「日本人=貯金好き」というイメージは、今の実態とはズレていると言っていい。
「日本人は貯金好き」というイメージの背景
まず結論から言うと、このイメージは完全なデタラメではない。ただし「今の話」ではなく「昔の話」だ。ここは事実として順番に見ていこう。
過去のデータでは高水準だった事実
日本の家計貯蓄率(可処分所得に占める貯蓄の割合)は、1970年代半ばに20%を超える水準まで上昇し、当時の先進国の中でもトップクラスだったことが確認されている。高度経済成長期の所得の伸びと、社会保障がまだ発展途上だったことによる自己防衛的な貯蓄行動などが背景として指摘されている。
その後、平成に入ってからも二桁台の水準は続いていて、内閣府の統計を見ると1994年には約12%まで達し、これが平成期のピークだったとされる。「日本人は貯金好き」というイメージは、この時代の日本を知る世代の実感から来ているものだと考えられる。
戦後から高度経済成長期にかけて日本の貯蓄率が高水準だった理由としては、所得の伸びが速かった一方で公的年金や医療保険といった社会保障制度がまだ発展途上で、病気や老後に備えて自分でお金を貯めておく必要性が高かったことなどが指摘されている。また当時は住宅ローンなど個人向け金融サービスも今ほど整っておらず、まとまった資金を先に貯めてから住宅や耐久消費財を購入するという行動様式も、貯蓄率を押し上げる一因になっていたと考えられている。
ボクの親世代がよく「昔は貯金するのが当たり前だった」って言うの、あれ別に美化じゃなくてマジで数字通りなんだよね。1970年代の20%超えって、可処分所得の5分の1を貯蓄に回してたってことだから、今の感覚だとちょっと信じられない水準。でも「あの頃の話」を今の日本にそのまま当てはめるのは、さすがに時代錯誤だとボクは思う。
日本の家計貯蓄率の年代別推移(概念図)
内閣府「国民経済計算」等の公表資料をもとに作成。年ごとの正確な数値は年度や統計改定により変動するため、上図はおおまかな推移を示す概念図。2013〜2014年頃は消費増税前の駆け込み消費などの影響で一時マイナス圏に。2020年は新型コロナ対応の特別定額給付金と消費自粛が重なり急上昇した。
OECDデータで見る近年の貯蓄率
ここからが本題だ。「今の日本」はOECD加盟国の中でどのポジションにいるのか、実際のデータを見てみよう。歴史的な高水準のイメージだけを頼りに資産計画を語るのではなく、直近の公的統計に基づいて現在地を確認しておくことが、この先の話の土台になる。
表:主要国の家計貯蓄率比較
OECDが公表している家計貯蓄率(可処分所得に対する純貯蓄の割合)のデータをもとに、主要国を比較した表が以下だ。年は国によって直近の公表年が異なる点に注意してほしい。
| 順位 | 国 | 家計貯蓄率(目安) |
|---|---|---|
| 1 | スウェーデン | 16.0% |
| 2 | フランス | 12.8% |
| 3 | ドイツ | 11.2% |
| 4 | オランダ | 9.5% |
| 5 | カナダ | 5.0% |
| 6 | 米国 | 4.9% |
| 7 | 韓国 | 4.8% |
| 8 | 英国 | 4.7% |
| 9 | イタリア | 4.2% |
| 下位 | 日本 | 0.9% |
出典:OECDデータを集計したVisual Capitalist「Ranked: How Much People Save Around the World」をもとに作成(集計対象国は24カ国、データ年は国により異なる)。原データはOECD「Household savings」指標。
この表を見ると分かる通り、上位を占めているのはスウェーデンやフランス、ドイツといった北欧・欧州勢だ。一方で「貯金好き」というイメージが強い日本は、下から数えた方が早い水準にとどまっている。もちろん貯蓄率は単年の景気動向にも左右されるため、この一時点の数字だけで国民性を語るのは早計だが、少なくとも「日本が世界一の貯蓄率を誇っている」という認識は、直近のデータには当てはまらないと言っていい。
この表を初めて見たとき、ボクも「え、日本ってそんな低いの?」って二度見した。イメージだと北欧とか米国の方が「使う文化」で、日本が「貯める文化」だと思ってたけど、直近データだと真逆に近い。証券外務員一種の勉強してた時も各国の家計金融資産の話は出てきたけど、貯蓄率単体でここまでハッキリ下位に来てるのは正直意外だった。
なぜ貯蓄率が変化してきたのか(ここからは解釈)
ここから先は、データそのものではなくボクなりの解釈が入る。事実と切り分けて読んでほしい。
高齢化など構造的要因
貯蓄率が長期的に下がってきた背景として、複数の分析で共通して挙げられているのが高齢化だ。家計貯蓄率は「働いて所得を得て、その一部を貯蓄に回す現役世帯」と「年金などを受け取りながら貯蓄を取り崩す高齢世帯」の合算で決まる。高齢化が進み、貯蓄を取り崩す側の世帯の比率が増えれば、社会全体の貯蓄率は構造的に下がりやすい——というのが内閣府の分析などで指摘されている論点だ。
ここはボクの解釈だが、これは「日本人が浪費家になった」という話ではなく、人口構成という制度・構造の問題だとボクは見ている。個人の消費行動が変わったというより、社会の年齢構成そのものが変わったことの反映という側面が大きい。この点で、貯蓄率の数字だけを見て「今の若い世代は貯金しない」と決めつけるのは、データの読み方としてはやや粗いとボクは思う。
総務省の家計調査などを見ても、高齢の無職世帯は年金収入だけでは生活費をまかないきれず、保有している貯蓄を取り崩しながら暮らしているケースが多いことが分かる。現役世代がどれだけ頑張って貯蓄をしても、高齢の無職世帯の取り崩しがそれを上回れば、国全体の貯蓄率はマイナス方向に働く。これは個人の努力や意識の問題というより、人口構成という社会全体の仕組みの結果だとボクは捉えている。
また2013〜2014年頃の消費増税前後の駆け込み消費や、2020年のコロナ禍における特別定額給付金と自粛による一時的な貯蓄率急上昇のように、単年の数字は政策的なイベントで大きくブレることも多い。1年分の数字だけを切り取って「日本は貯蓄率◯%だ」と断定するのは危ういというのが、データを見ての率直な感想だ。
貯蓄率の高さは資産形成にとって良いことなのか
ここも解釈になるが、大事な論点なので触れておく。結論から言うと「貯蓄率が高い=個人の資産形成にとって常に良い」とは単純に言い切れない。
貯蓄と投資の違いという視点
統計上の「家計貯蓄率」は、預金だけでなく保険・年金の積立や有価証券の純増分なども含めて計算される。つまり「貯蓄率」という言葉のイメージと、実際の統計上の定義には少しズレがある。この違いを図にすると次のようになる。
ここからは解釈だが、貯蓄率の数字を見るときは「現金・預金として寝ているお金」と「値動きのあるリスク資産に回っているお金」を分けて考える視点が大事だとボクは考えている。貯蓄率が高くても、その中身のほとんどが現金・預金であれば、インフレ局面ではお金の実質的な価値が目減りするリスクもある。逆に貯蓄率が低くても、消費や投資に資金が回っていること自体は経済活動としては悪いことではない。
もう一つ整理しておきたいのが、「貯蓄率」はあくまで一定期間(通常は1年間)に新たに貯蓄へ回った金額の割合を示す「フロー」の指標だという点だ。これに対して、これまでに積み上がった貯蓄の残高、いわゆる金融資産の合計は「ストック」の指標であり、両者は別物になる。日本の家計貯蓄率が直近で低いからといって、日本人がこれまで積み上げてきた金融資産の残高そのものが少ないというわけではない。フローの貯蓄率とストックの資産残高は、分けて捉える必要があるとボクは考えている。
なお、omatome-news.siteは特定の金融商品や投資手法を推奨するサイトではない。「貯蓄率が高い方が得か、投資に回した方が得か」を断定することはせず、あくまで公的データが何を示しているかの解説にとどめる。個々の資産配分は、あなた自身のライフプランやリスク許容度に応じて判断してほしい。
よくある質問
Q1. 貯蓄率が高いことは良いことですか?
A. 一概には言えない。経済全体で見ると、貯蓄率が高いということは消費や投資に回らないお金が多いという側面もある。個人にとっての「良い・悪い」と、マクロ経済全体にとっての「良い・悪い」は必ずしも一致しない点に注意してほしい。
Q2. 貯蓄率は今後どうなりますか?
A. 高齢化の進行など構造的な要因があるため、将来の水準を断定することはできない。本記事では現状のデータを示すにとどめ、将来予測は行わない。
Q3. 家計貯蓄率の「貯蓄」には何が含まれますか?
A. OECDや内閣府の定義では、家計貯蓄率は「可処分所得-消費支出」に、年金の積立増減の調整などを加えて算出される。銀行預金だけでなく、保険・年金の積立や有価証券の純増分も含まれるため、日常会話での「貯金」よりも範囲が広い統計上の概念だという点は覚えておいてほしい。
Q4. 日本と海外で貯蓄率の測り方に違いはありますか?
A. 基本的な考え方(SNA、国民経済計算のフレームワーク)は共通しているが、国ごとに統計の改定時期やデータの直近年が異なるため、単純に同じ年で横比較できない場合がある。本記事の比較表も、国によって参照年が異なる点をふまえて「目安」として見てほしい。
Q5. 貯蓄率が低い=貯金の残高も少ないということですか?
A. そうとは限らない。貯蓄率はあくまで一定期間に新たに貯蓄へ回った金額の割合を示す「フロー」の指標であり、これまで積み上がった貯蓄残高という「ストック」の指標とは別物だ。ある年の貯蓄率が低くても、過去からの貯蓄残高自体が少ないとは言い切れない点には注意してほしい。
出典・参考データ
- OECD「Household savings」(家計貯蓄率指標) https://www.oecd.org/en/data/indicators/household-savings.html
- OECD Data Explorer「Annual national disposable income, saving and net lending/borrowing」 https://data-explorer.oecd.org(家計貯蓄率データ)
- 内閣府経済社会総合研究所「国民経済計算(SNA) 家計可処分所得・家計貯蓄率」計数表 https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakei/files/files_kakei.html
- 内閣府「新型コロナウイルス感染症の拡大以降の家計貯蓄動向」 https://www5.cao.go.jp/keizai3/monthly_topics/2022/0112/topics_065.pdf
- 総務省統計局「家計調査年報(貯蓄・負債編)」 https://www.stat.go.jp/data/sav/np.html
- (参考・二次集計)Visual Capitalist「Ranked: How Much People Save Around the World」(OECDデータ集計) https://www.visualcapitalist.com/household-savings-rates-by-country-ranked/
金融ITの現場で働くエンジニア。基本情報技術者・簿記2級・証券外務員一種ほか、働きながら資格を取ってきた実体験と、世界のデータをもとに「ズバッと分かる」解説をお届け。→ さるちゃんって何者?(プロフィール)
