さるちゃんのズバッと結論
個人向け国債は「額面100円につき100円で買い戻す」と国が決めているから、価格が下がって元本が削れることはない。中途換金でも同じだ。ただし発行後1年間は原則換金できないし、換金時は直前2回分の利子相当額が差し引かれる。「元本割れしない」は本当。「絶対に損しない」は言いすぎ。ここを混ぜて語る記事が多すぎる。

どうも、金融IT企業でエンジニアをやってるサル、さるちゃんです。金利がじわじわ上がってきて、「個人向け国債」という言葉を久しぶりに見た人も多いはずだ。ネットを見ると「元本保証」「絶対に減らない」みたいな説明が並ぶ。遠回しはナシだ。ズバッと言うと、その説明は半分正しくて、半分は説明不足。この記事では財務省の公式資料をもとに、仕組み・実際の利率・そして省略されがちな注意点を整理する。特定の商品をすすめる記事ではないので、そのつもりで読んでほしい。

個人向け国債の基本的な仕組み

個人向け国債は、国が個人向けに発行している債券だ。お金を国に貸して、半年ごとに利子を受け取り、満期になったら額面が戻ってくる。ここまでは普通の債券と同じ。個人向け国債が他と違うのは、買い戻す値段があらかじめ決まっている点にある。

財務省の商品概要によると、償還金額は額面金額100円につき100円。そしてカッコ書きで「中途換金時も同じ」と明記されている。つまり、途中でやめても元本部分は目減りしない設計だ。購入は最低1万円から1万円単位、発行は毎月(年12回)、利子の受け取りは半年ごとに年2回となっている。

変動10年・固定5年・固定3年の違い

種類は3つ。ざっくり言えば「金利が動くか、動かないか」と「満期までの長さ」の違いだけだ。

項目変動10年固定5年固定3年
満期10年5年3年
金利タイプ変動金利(半年ごとに見直し)固定金利固定金利
金利の決め方基準金利×0.66基準金利−0.05%基準金利−0.03%
金利の下限0.05%(年率)。上限はなし
購入単位最低1万円から1万円単位
償還金額額面金額100円につき100円(中途換金時も同じ)
中途換金発行後1年経過すれば、いつでも国の買取により可能
2026年8月募集分の
表面利率(年)
1.87%
(税引後1.4901095%)
2.06%
(税引後1.6415110%)
1.71%
(税引後1.3626135%)

※利率は財務省「現在募集中の個人向け国債・新窓販国債」(令和8年8月5日現在)。募集期間は令和8年8月6日〜31日、発行日は令和8年9月15日。利率は毎月の募集ごとに変わるため、購入時は必ず財務省の最新ページで確認を。

面白いのは、今は固定5年(2.06%)が変動10年(1.87%)より高いという点だ。「長く貸すほど金利が高い」という直感に反する。理由は金利の決め方にある。変動10年は基準金利に0.66を掛ける方式なので、基準金利が上がっても掛け目のぶん抑えられる。一方で固定5年・固定3年は基準金利から0.05%・0.03%を引くだけだ。金利上昇局面では、この差が逆転として表に出てくる。

なお変動10年の掛け目方式は、平成23年7月発行分から導入されたもの。それ以前は「基準金利−0.80%」という引き算方式で、低金利時に利率が下がりすぎるのを防ぐために見直された、と財務省は説明している。

「元本割れしない」と言われる理由

ここが本題だ。なぜ個人向け国債だけ「元本割れしない」と言われるのか。答えは市場で売らなくていいからである。

普通の債券は、途中で現金化したければ市場で誰かに売る。売値はそのときの市場価格だから、金利が上がっていれば価格は下がり、売却損が出る。ところが個人向け国債は、市場ではなく国が額面100円につき100円で買い取ってくれる。相手が市場ではなく国だから、価格変動のリスクを負わずに済む。これが「元本割れしない」の中身だ。

同じ「国債」でも、途中で現金化するときの値段が違う 100円 時間(金利が動く) 新窓販国債:市場価格で売却 →100円を下回れば売却損 個人向け国債:国が額面100円につき100円で買取 ※縦軸は換金したときに戻ってくる金額のイメージ(実際の値動きを示すものではありません)

ここで大事なのは、「国債だから安全」ではなく「個人向け国債という商品設計だから価格変動がない」ということ。同じ国が発行していても、後述する新窓販国債は市場で売るので元本割れがありうる。混同されやすいポイントなので、後半でもう一度触れる。

さるちゃんの本音
「元本保証」って言葉、ボクは引っかかる。財務省の資料に書いてあるのは「償還金額は額面金額100円につき100円(中途換金時も同じ)」という事実であって、「保証」という言い方じゃない。似てるけど別物だ。元本が減らないのは商品設計の結果で、そこには1年間換金できないという交換条件がくっついている。都合のいい部分だけ切り出して「保証」と呼ぶのは、説明としてフェアじゃないよね。

省略されがちな注意点は3つ

(1)発行後1年間は原則として換金できない

財務省は「発行後1年経過すれば、いつでも中途換金が可能」と書いている。裏返せば、最初の1年は原則として現金化できないということだ。近いうちに使う予定のあるお金を入れると、必要なときに引き出せない。ここは銀行預金との決定的な違いになる。

ただし例外がある。財務省の注記によると、災害救助法の適用対象となった大規模な自然災害で被害を受けた場合、または保有者本人が亡くなった場合には、1年を待たずに中途換金できる。

(2)中途換金では直前2回分の利子相当額が差し引かれる

1年を過ぎて換金するときも、無条件でそのままではない。財務省の商品概要にはこう書かれている。「直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれます」。この0.79685という数字は、利子を受け取るときに20.315%の税金が引かれているための調整だ(1−0.20315=0.79685)。

言葉だとピンと来ないので、実際に計算してみる。2026年8月募集の固定5年(表面利率2.06%)を100万円分買って、2年後に中途換金したケースだ。

100万円・固定5年(2.06%)を2年で中途換金したら? 財務省公表の利率と計算式にもとづく試算(円未満は概数) 2年間で受け取る利子 約32,830円 (税引後・半年ごと4回分) 中途換金調整額 約16,415円 (直前2回分×0.79685) = 手元に残る利子 約16,415円 (受取額のおよそ半分) 元本1,000,000円は全額そのまま戻る(額面100円につき100円) 差し引かれるのは利子の一部だけで、元本が削られることはない 計算の内訳:半年分の利子(税引前)=1,000,000円×2.06%÷2=10,300円 税引後の半年利子=10,300円×0.79685≒8,207円 → 4回で約32,830円 中途換金調整額=10,300円×2回分×0.79685≒16,415円

結果はこうだ。元本100万円は満額戻る。ただし2年で受け取った利子のおよそ半分が消える。感覚としては「直近1年分の利子を返す」に近い。損得で言えば、元本は割れないが、期待していた運用成果は目減りする。「元本割れしない」と「損しない」が違う、というのはこういう意味だ。

(3)物価が上がれば、お金の価値は目減りしうる

3つ目は、商品の外側にある話。額面の金額が減らないことと、その金額で買えるモノの量が減らないことは、別の問題だ。物価上昇率が受け取る利率を上回る期間があれば、金額は増えていても購買力は下がる。これは個人向け国債に限らず、現金や預金を含むすべての「円建てで金額が固定される資産」に共通する論点である。

ここは断定を避けたい。将来の物価や金利がどう動くかを当てられる人はいないし、この記事は投資判断を促すものではない。ただ「元本が減らない=価値が減らない」ではない、という区別だけは知っておいたほうがいい。日本の物価水準そのものについては日本の物価は世界と比べて本当に安いのか?『安いニッポン』をデータで検証する国際比較で扱っている。

同じ「国債」でも新窓販国債は元本割れしうる

ここを混同している人がかなり多い。国が個人でも買える形で出している国債には、個人向け国債のほかに新型窓口販売方式国債(新窓販国債)がある。財務省の同じページに並んで掲載されているのだが、性質はまるで違う。

財務省の説明では、新窓販国債の中途換金は「市場でいつでも売却が可能です。ただし、その時々の市場価格となるため、売却損、売却益が発生します(元本割れのリスクあり)」と明記されている。一方の個人向け国債には「(元本割れのリスクなし)」と書かれている。公式が同じページで、わざわざ書き分けているわけだ。

もうひとつの違いは募集価格。個人向け国債の募集価格は額面100円につき100円ちょうどだが、新窓販国債は回号によって変わる。たとえば令和8年8月募集分の10年債は募集価格99円32銭、2年債は100円10銭と、額面と一致していない。つまり買った時点で額面との差がある。

「国債」という言葉だけで判断すると、この違いを見落とす。金利そのものの動きが気になる人は、住宅ローン、変動金利と固定金利どっちが得?仕組みで比較も合わせて読むと、変動と固定の考え方が整理しやすい。

銀行預金とどう違うのか

「じゃあ定期預金とどっちがいいの?」という疑問が当然出てくる。ここは正直に言うと、単純比較はできない。性質が違うからだ。事実として整理できるのは次の点になる。

  • お金を預ける相手が違う:個人向け国債は国に貸す。預金は金融機関に預ける(預金保険制度による保護の枠組みがある)。
  • 途中で引き出せるかが違う:預金は満期前でも引き出せるものが多い。個人向け国債は発行後1年間は原則不可、その後も利子の調整がある。
  • 金利の決まり方が違う:個人向け国債の利率は財務省が毎月公表し、下限0.05%が保証されている。預金金利は金融機関ごとに設定され、商品や期間で幅がある。

金額の有利・不利は、そのときの預金金利と国債の利率、そしてどれくらいの期間置いておけるかで変わる。この記事では「どちらが得か」の結論は出さない。最新の預金金利は日本銀行が公表している統計で確認でき、国債の利率は財務省のページで毎月更新される。両方を見比べてから判断するのが筋だ。金融機関の選び方という観点では、NISA口座はどこで開くべき?仕組みで見る金融機関選びのポイントで整理した考え方が参考になるかもしれない。外貨で持つ選択肢との違いは外貨預金は今から始めるべき?仕組みとリスクをわかりやすく解説にまとめた。

よくある質問

個人向け国債は誰でも買えますか?

購入できるのは個人に限られる。財務省によると購入単位は最低1万円から1万円単位で、発行は毎月(年12回)行われている。実際の購入手続きは取扱金融機関を通じて行う形で、令和8年8月募集分では873機関が取り扱っていると財務省が公表している。

本当に元本割れしないのですか?

財務省は償還金額を「額面金額100円につき100円(中途換金時も同じ)」と定めており、市場価格で売る必要がないため額面での元本割れは生じない設計になっている。ただし中途換金の際は直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれるため、受け取れる利子は減る。元本が減らないことと、損得がゼロであることは別の話として理解しておきたい。

いつでも解約できますか?

発行後1年が経過すれば、いつでも国の買取による中途換金ができる。逆に発行後1年間は原則として換金できない。例外として、災害救助法の適用対象となる大規模な自然災害で被害を受けた場合や、保有者本人が亡くなった場合は、この期間に関わらず中途換金が認められている。

金利はどれくらいですか?

発行のたびに変わるため、購入時に財務省の公式ページで確認する必要がある。令和8年8月5日時点で募集されていた回号の表面利率は、変動10年が年1.87%、固定5年が年2.06%、固定3年が年1.71%だった。なお個人向け国債にはすべての種類に年0.05%の金利の下限が設けられており、上限はない。利子を受け取る際には20.315%の税金が差し引かれる。

まとめ

結論をもう一度。個人向け国債は、額面での元本割れがない設計。ただし「絶対に損しない」ではない。押さえるべきは3点だ。

  • 国が額面100円につき100円で買い取るため、市場価格の変動を受けない(中途換金時も同じ)
  • 発行後1年間は原則換金できず、その後の中途換金では直前2回分の利子相当額が差し引かれる
  • 同じ国債でも新窓販国債は市場売却のため、財務省自身が「元本割れのリスクあり」と明記している

数字はウソをつかない。ウソをつくのは数字の"見せ方"だ。「元本保証」の4文字だけを見て決めるんじゃなくて、その裏にある1年ルールと利子の調整までセットで理解してほしい。そこまで分かったうえで自分に合うかどうかを決めるのは、あなた自身だ。

出典・参考データ

この記事を書いたサル: さるちゃん
金融ITの現場で働くエンジニア。基本情報技術者・簿記2級・証券外務員一種ほか、制度と数字を一次情報から読み解いて「ズバッと分かる」解説をお届け。→ さるちゃんって何者?(プロフィール)

本記事は制度の仕組みを解説するものであり、特定の金融商品の購入や投資を勧誘するものではありません。金利・制度の内容は変更される場合があるため、実際の判断にあたっては財務省および取扱金融機関の最新情報をご確認ください。

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