さるちゃんのズバッと結論
「国の借金1,346兆円、国民1人あたり1,095万円」——この見出し、主語がすり替わっている。借りているのは政府で、国債を持っている側(=貸し手)には日本の銀行・保険・年金、そして日本銀行が並ぶ。日銀だけで国債の47.9%を保有している。しかも利払費は平成2年度の11.2兆円に対し令和8年度が13.1兆円。債務が数倍になっても利払いは1.9兆円しか増えていない。ただし「だから問題ない」も同じくらい雑だ。効いてくるのは金利が上がったときで、そこが本当の論点なんだ。

どうも、金融IT企業でエンジニアをやってるサル、さるちゃんです。数字とシステムの世界で生きている。

四半期に一度、「国の借金が過去最大を更新」というニュースが流れる。そして毎回、SNSは「もう終わりだ」派と「借金じゃない、問題ない」派に真っ二つになる。どちらも、そのままでは間違いだ。

遠回しはナシだ。この記事では、財務省の残高統計、日本銀行の資金循環統計、令和8年度予算、そしてIMFの国際比較という4つの一次データを使って、「国の借金」をめぐる3つの誤解を数字で整理していく。安心させるためでも、煽るためでもない。不安の輪郭を、正しいサイズにするためだ。

結論:金額の大きさより「誰が持っているか」と「金利」を見る

先に答えを置く。公表データから言えることは、こうだ。

  • 2026年6月末時点のいわゆる「国の借金」は1,346兆6,833億円。前期末から2兆8,407億円増えて過去最大(財務省)
  • ただし国債の保有者は日本銀行が47.9%、海外は8.1%。国内で回っている構造は変わっていない(日本銀行「資金循環統計」)
  • 令和8年度予算の利払費等は13兆672億円。歳出全体の10.7%で、平成2年度の11.2兆円(約16.9%)から大きくは増えていない
  • 債務残高の対GDP比は204.4%(2026年推計)で主要先進国のなかで突出。ただしピークの2020年228.8%からは低下傾向(IMF)

つまり「借金が多いか少ないか」で言い合っても答えは出ない。正しい問いは「金利が上がったとき、この構造のどこが先に痛むのか」だ。ひとつずつ潰していく。

誤解①「国民1人あたり1,095万円の借金がある」

いちばん広まっている表現がこれ。総額を人口で割ると確かにその数字になるけれど、この割り算は、お金の流れの向きを逆に伝えてしまう。

借りているのは政府だ。では貸しているのは誰か。日本銀行の資金循環統計をもとにした財務省の集計(令和8年3月末・速報)を見ると、国債1,013兆7,559億円の保有者はこうなっている。

国債を持っているのは誰か:日銀が半分、海外は8.1%国債合計 1,013兆7,559億円(令和8年3月末・速報)。財投債を含む日本銀行 47.9%485兆4,280億円生損保等15.3%銀行等14.8%海外8.1%公的年金他※「他」は年金基金3.1%、家計2.0%、一般政府0.4%、その他1.2%同じ話を「向き」で描くと、こうなる政府国債を発行する側(借り手)利子を払う国債を持つ側(貸し手)日銀・銀行・保険・年金・海外家計も投資信託や預金を通じて間接的に保有している私たちの預金・年金・保険「1人あたり1,095万円の借金」という表現は、この矢印の向きを説明しない。家計は借り手ではなく、金融機関を通じて貸し手の側にも立っている。出典:財務省「国債等の保有者別内訳(令和8年3月末・速報)」、出所は日本銀行「資金循環統計」(令和8年6月25日公表)

日本銀行が485兆4,280億円(47.9%)で断トツ。次いで生損保等155兆3,280億円(15.3%)、銀行等149兆7,164億円(14.8%)、公的年金73兆4,456億円(7.2%)と続く。海外は82兆129億円で8.1%にとどまる。

ここで事実と解釈を分けておく。事実は「国債の9割超は国内で保有されている」こと。解釈としてよく言われるのが「だから外国に取り立てられることはない」という説明で、これは一面では正しい。ただし、国内で持たれていれば安全、という話にはならない。金利が上がれば、その損は国内の銀行・保険・年金が負う。次の論点はまさにそこだ。

なお、政府短期証券(国庫短期証券)まで含めると海外の保有割合は跳ね上がる。同じ資料では、国庫短期証券136兆2,991億円のうち海外が55.6%を持っている。短期の資金は国際的に動くので、ここは分けて見ておいたほうがいい。

誤解②「利払いが増えて、いずれ利払いだけで潰れる」

次の誤解。「借金が増え続けているから、利息の支払いだけで国家予算が食い潰される」というやつだ。これは方向としては正しいが、現状の数字とは合っていない。

令和8年度予算と、特例公債の発行から脱却できていた平成2年度予算を並べてみる。

項目平成2(1990)年度 当初予算令和8(2026)年度 予算差
一般会計 歳出総額66.2兆円122.3兆円+56.1兆円
国債費(元利払い合計)14.3兆円31.3兆円+17.0兆円
うち債務償還費3.1兆円18.2兆円+15.1兆円
うち利払費等11.2兆円13.1兆円+1.9兆円
歳出に占める利払費等の割合約16.9%10.7%▲6.2ポイント
社会保障関係費11.6兆円39.1兆円+27.4兆円
税収58.0兆円83.7兆円+25.7兆円

※金額は財務省「日本の財政関係資料(令和8年4月)」に掲載された比較図の数値(兆円単位)。「歳出に占める利払費等の割合」のうち令和8年度の10.7%は同資料の公表値、平成2年度の約16.9%は本記事で11.2兆円÷66.2兆円として算出した参考値。

ここ、ちゃんと見てほしい。債務残高はこの36年で大きく積み上がったのに、利払費は11.2兆円から13.1兆円へ、1.9兆円しか増えていない。歳出に占める割合はむしろ約16.9%から10.7%へ下がっている。

理由は単純で、その間に金利が大きく下がったからだ。残高が増えても、1円あたりに払う利息が下がれば、支払総額は抑えられる。逆に言えば——ここが本題なんだけど——この構造は金利が上がった瞬間に逆回転する。

増えたのは利払いではなく、社会保障と元本の償還一般会計歳出の内訳比較(単位:兆円)平成2(1990)年度 当初予算 66.2兆円利払費等11.23.1社会保障11.6その他の歳出 39.3令和8(2026)年度 予算 122.3兆円利払費等13.1債務償還費18.2社会保障 39.1※右端はスペースの都合で「その他の歳出51.9兆円」を縮めて表示している。棒の長さは歳出総額に比例。利払費等 11.2 → 13.1兆円(+1.9) / 歳出比 約16.9% → 10.7%社会保障 11.6 → 39.1兆円(+27.4) — 増えた主因はこちら出典:財務省「日本の財政関係資料(令和8年4月)」令和8年度一般会計予算、平成2年度と令和8年度の比較

もう一つ、財政の見方でよく使われるプライマリーバランス(基礎的財政収支)にも触れておく。これは「利払いを除いた歳出を、税収などでどれだけ賄えているか」を見る指標だ。内閣府の中長期試算(令和8年1月22日)をもとに財務省が示した資料では、国・地方のプライマリーバランスは長く赤字が続いてきたものの、2026(令和8)年度には歳入と歳出がおおむねバランスする姿を実現する見込みとされている。

これも事実と解釈を分ける。事実は「政府の試算上、PBは均衡見込みという段階まで来ている」こと。解釈としては、PBが均衡しても利払い分だけ債務は増え続けるので、「均衡=債務が減る」ではない。ここを混ぜて語る議論が多い。

さるちゃんの本音
「国の借金」という言葉、そろそろやめないか。これは家計の借金とは仕組みが違う。家計は返済期限が来たら現金で返すしかないけど、政府は満期が来た国債を新しい国債に借り換えられる。だから比べるべきは「残高そのもの」じゃなく「毎年の利払いを税収で払えるか」だ。そして今の日本は、その利払いが歳出の10.7%。問題は残高じゃなく金利なんだよ。ニュースが毎回「過去最大」しか言わないのは、そのほうが分かりやすいからだ。分かりやすさに慣らされると、見るべき数字を見なくなる。

誤解③「世界一の借金大国だから、いつ破綻してもおかしくない」

3つ目。国際比較のデータを見ると、たしかに日本の水準は突出している。ただし「突出している」と「破綻が近い」は別の話なので、数字で確認しておく。

財務省がIMF「World Economic Outlook」(2026年4月)をもとにまとめた主要先進国の債務残高対GDP比は、次のとおり(一般政府ベース)。

国2019年2020年2024年2026年(推計)
日本206.3%228.8%214.5%204.4%
イタリア133.9%154.4%134.7%138.4%
米国108.8%132.6%122.3%125.8%
フランス98.2%114.9%113.2%118.4%
カナダ90.1%118.1%110.0%110.7%
英国84.9%104.8%99.9%103.6%
ドイツ58.7%68.0%62.2%64.6%
債務残高対GDP比:日本は突出。ただしピークアウトはしている2026年の推計値(一般政府ベース)。IMF「World Economic Outlook」2026年4月日本204.4%イタリア138.4%米国125.8%フランス118.4%カナダ110.7%英国103.6%ドイツ64.6%日本の推移: 2019年 206.3% → 2020年 228.8%(ピーク) → 2024年 214.5% → 2026年 204.4%出典:財務省「日本の財政関係資料(令和8年4月)」14.債務残高の国際比較(対GDP比)。原データはIMF WEO(2026年4月)

日本は204.4%で、2位のイタリア138.4%を大きく引き離している。財務省の同じ資料では、2024年の値で比較した172の国・地域のうち日本が最も高いと示されている。ここは事実として受け止めるしかない。

一方で見落とされがちなのが推移だ。コロナ対応で膨らんだ2020年の228.8%をピークに、2024年214.5%、2025年206.5%、2026年204.4%と4年連続で低下している。分母である名目GDPが伸びている影響が大きい。「毎年悪化し続けている」という前提の話は、少なくとも直近の数字とは合っていない。

もう一つ、日本の特徴として挙げられるのが対外的な資産の厚さだ。財務省の「本邦対外資産負債残高」によると、2025(令和7)年末時点の日本の対外純資産は561兆7,504億円(対外資産1,805兆6,342億円-対外負債1,243兆8,838億円)で、前年末比4.4%増、8年連続の増加となっている。なお国際的な順位については、中国とドイツに抜かれて3位に後退したと報じられている(時事通信ほか)。

ここも解釈を混ぜないでおく。対外純資産は政府ではなく日本全体(企業・家計・政府の合計)の対外的な資産と負債の差であって、政府の債務を直接返済できる原資ではない。「対外純資産があるから財政は大丈夫」という説明は、主体をすり替えている。ただし、通貨や国際収支の安定を評価するときに参照される数字ではある、というのが正確なところだ。

じゃあ、本当に見るべき論点は何か

誤解を3つ潰したところで、代わりに何を見ればいいのかを整理する。公表データから読み取れる論点は、この3つだ。

  1. 金利上昇のスピード。利払費が抑えられてきたのは低金利の産物だ。国債は満期のたびに借り換えられるので、金利が上がると、借り換えの進行に合わせて利払費がじわじわ増えていく。令和8年度の利払費等13兆672億円という数字は、この先の金利次第で意味が変わる
  2. 日銀が持つ47.9%の行方。中央銀行が国債の半分近くを保有する構造は、平時のものではない。保有をどう扱うかは金融政策の話であり、財政の話でもある
  3. 社会保障と歳出構造。平成2年度から令和8年度までで、社会保障関係費は11.6兆円から39.1兆円へ27.4兆円増えた。利払費の増加1.9兆円とは桁が違う。財政を動かしている主役は、利息ではなく社会保障だ

3つとも、「破綻するかどうか」という二択では扱えない話だ。年金の持続可能性を同じようにデータで見た記事は年金はもらえなくなる?所得代替率50.4%で破綻論をデータ検証に書いた。構造はよく似ていて、起きるのは「ゼロになること」ではなく「水準や負担の調整」だ。

家計として、どこを見ておけばいいか

「国の借金」のニュースを見たときに、家計の側でチェックする価値があるのは次の3つだと思う。

国際比較の目線をもう少し広げたい人は、実質賃金が上がらないのは日本だけ?G7諸国の賃金データを徹底比較や日本の物価は世界と比べて本当に安いのか?『安いニッポン』をデータで検証する国際比較も合わせて読むと、財政の話が生活の話につながって見えてくると思う。

※本記事は公的機関が公表している資料の内容を整理したものであり、特定の金融商品の購入や運用方法を勧めるものではありません。また将来の財政・金利・物価の動向を予測・保証するものでもありません。個別の判断は最新の一次資料や専門家にご確認ください。

よくある質問

Q. 「国の借金」1,346兆円には何が含まれているのですか?

財務省が四半期ごとに公表している「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」の合計額だ。令和8年6月末時点では合計1,346兆6,833億円で、内訳は内国債1,211兆7,466億円(うち普通国債1,110兆8,839億円、財政投融資特別会計国債88兆2,854億円)、借入金40兆5,374億円、政府短期証券94兆3,994億円。前期末から2兆8,407億円増えている。なお政府保証債務27兆4,346億円はこの合計には含まれない。

Q. 国民1人あたり約1,095万円の借金があるというのは本当ですか?

総額を人口で割ればその金額になるが、この表現は借り手と貸し手の関係を正しく伝えていない。国債を発行しているのは政府であり、家計は借り手ではない。国債の保有者内訳(令和8年3月末・速報)を見ると、日本銀行47.9%、生損保等15.3%、銀行等14.8%、公的年金7.2%などで、家計も預金・保険・年金を通じて間接的に貸し手の側に立っている。

Q. 日本の国債は外国に買われているのですか?

国債(財投債を含む)1,013兆7,559億円のうち、海外の保有は82兆129億円で8.1%。9割以上は国内で保有されている。ただし国庫短期証券(政府短期証券)136兆2,991億円については海外が55.6%を保有しており、短期と長期で構造が異なる点は分けて見る必要がある。

Q. 借金が増えているのに、なぜ利払費はあまり増えていないのですか?

金利が大きく低下したためである。令和8年度予算の利払費等は13兆672億円で、平成2年度当初予算の11.2兆円と比べて1.9兆円の増加にとどまる。歳出に占める割合はむしろ約16.9%から10.7%へ低下している。ただしこれは低金利を前提とした構造であり、金利が上昇すれば借り換えの進行に伴って利払費は増加していく。

Q. 債務残高の対GDP比は今も悪化し続けているのですか?

直近では低下している。IMF「World Economic Outlook」(2026年4月)をもとにした財務省資料では、日本の債務残高対GDP比は2020年の228.8%をピークに、2024年214.5%、2025年206.5%、2026年204.4%(推計)と推移している。ただし水準自体は主要先進国のなかで突出して高く、172の国・地域(2024年の値で比較)のなかで最も高い。

まとめ

もう一度ズバッと。「国の借金1,346兆円」は事実だが、「国民1人あたり1,095万円の借金」は誤解だ。借りているのは政府で、貸しているのは日銀・銀行・保険・年金——つまり大半が国内だ。海外の保有は8.1%にすぎない。

そして「だから問題ない」も同じくらい雑だと思う。利払費が抑えられてきたのは低金利という条件があったからで、条件が変われば結果も変わる。債務残高対GDP比204.4%が主要国で突出しているのも事実だ。

数字はウソをつかない。ウソをつくのは数字の切り取り方だ。「過去最大」も「1人あたり」も、聞いた瞬間に分かった気になれる便利な言葉だけれど、そこで思考が止まるようにできている。次にこのニュースを見たら、金額じゃなく「利払費が歳出の何%か」を探してみてほしい。そっちのほうが、自分の生活に効いてくる数字だ。悩んでる時間がいちばんもったいない。

出典・参考データ

※本記事の数値は2026年9月時点で公表されている資料に基づきます。残高統計は四半期ごと、予算は年度ごと、IMFの見通しは年2回程度更新されます。最新情報は財務省・日本銀行・内閣府の公式サイトでご確認ください。

この記事を書いたサル: さるちゃん
金融ITの現場で働くエンジニア。基本情報技術者・簿記2級・証券外務員一種ほか、数字と制度を「ズバッと分かる」形に翻訳するのが仕事。→ さるちゃんって何者?(プロフィール)