いなば食品、その名前を聞けば多くの人が口ずさむことのできる「ちゅ〜るちゅ〜る　CIAOちゅ〜る」や「ラ〜イトツナは、いなば」といった軽快なCMが思い浮かぶはずです。また、今年3月には、日本を代表する野球選手・大谷翔平選手が所属するロサンゼルス・ドジャースのスポンサーになるなど、国内外でその名を轟かせる有名企業です。しかし、そんな輝かしい表の顔とは裏腹に、企業内で深刻な問題が起こっていたことが「週刊文春」の取材によって明らかになりました。

この春、いなば食品の新入社員19人のうち少なくとも17人が入社を辞退していたのです。その辞退率は実に9割に上ります。一体何がそこまで多くの新入社員を辞退に追い込んだのでしょうか。入社を辞退した一人の女性が語るところによれば、「真新しい社員寮が完成している」との期待とは裏腹に、実際に案内されたのは古い一軒家ばかりだったといいます。さらに、その一軒家で新入社員同士が2〜4人に分かれて共同生活を強いられるというのです。

この状況は、一部からは“ボロ家ハラスメント”と呼ばれ、新入社員の保護者からの抗議もあったとされています。また、給料に関しても、入社直前になって募集要項に明記されていた額より3万円少ない額が提示されたというのです。これに関して労働問題に詳しい佐々木亮弁護士は、「入社前に会社が示していた条件と相違があれば労働者との契約違反となります」と述べています。

いなば食品の現役社員の声によれば、社長夫人で現在は取締役の稲葉優子会長が、社員の待遇を指示しているとのこと。社内では「逆らうと、どうなるかわからない」と恐れられる“女帝”として知られています。

このように、いなば食品では新入社員を取り巻く環境や待遇に大きな問題があることが明らかになりました。企業は社員にとって働きやすい環境を提供することが重要ですが、いなば食品ではその基本が守られていないようです。この問題が公になったことで、企業側はどのような対応を取るのか、今後の動きに注目が集まります。